不安(不安症)の困りごとについて

1.はじめに

 皆さんは、不安に悩まされていますか?自分は不安が強いほうだ、という方は、もしかすると、「不安なんてなくなればいいのに」「不安さえなければ、幸せに暮らせるのに」と思うことがあるかもしれません。
しかし、不安は、私たちが生きていく上で、なくてはならない感情なのです。例えば、不安がゼロになったらどうなるでしょうか…?車がビュンビュンと行き交う国道の交差点でよく注意せずに横断し、事故に遭ってしまうかもしれません。冷蔵庫の中で賞味期限が3年過ぎた納豆を見つけて、大丈夫だろう、と食べ、お腹を壊してしまうかもしれません。このように、不安がゼロになってしまえば、生きていく上で非常に困ってしまいます。不安は、危険を知らせるアラームのような役割を持っていて、私たちが生活していくためには、ある程度の不安は必要なのです。ただ、不安が強すぎて日常生活に支障をきたしているときや、不安が強くて本当はやりたいことができなくなっている、という方もいるのではないでしょうか。そのように、危険を知らせるアラームが敏感に鳴りすぎている場合、不安症と診断されることがあります。

2.不安のテーマ

 何を不安に感じるか?というテーマは、人それぞれです。例えば、人と話すこと、人前でスピーチすること、人前で字を書くこと、自分の臭いに気づかれること、人前でお腹が鳴ること等に強い不安を抱く「社交不安症」、虫、犬、けが、嘔吐、血液、雷、暗闇等の特定の対象に恐怖を感じる「特定の恐怖症」、過呼吸、発汗、震え、息苦しさ等のパニック発作後にまた発作が起こるのではないか?と恐れる「パニック症」などがあります。パニック症の方は、バスや電車など、一定時間拘束される空間に恐怖を感じることも多く(その空間で自分の身体が突然不調をきたすことを恐れます)、その場合「広場恐怖を伴うパニック症」と診断されます。不安症は、まだまだ広く知れ渡っているとはいいがたく、性格だからどうしようもないと思われていることが多いです。そのため、困っていても、なかなか精神科受診やカウンセリング来談に繋がりにくいのですが、実際には治療することで改善できる困りごとです。

3.不安が続くしくみ

不安が続くしくみとして、「認知」や「行動」のクセがあります。
例えば、社交不安が強いAさんの例(架空事例)から見てみましょう。

 

 【20代のAさんは、看護師になって2年目の男性です。Aさんが勤める病棟では、朝のミーティングの際、交代で、数分間のスピーチをすることになっています。Aさんの番が回ってくるのは月に2回ほどで、15名のスタッフが集まる場で話す必要があります。昔からスピーチはとても苦手で、当日が近づくにつれ憂うつになってきます。必死でカンペを作り、家で何度も読む練習をします。当日、スピーチが始まると、手や声が震えてきて、足もガクガクしているのが分かります。「どうしよう、みんなから格好悪いと思われている、挙動不審に見えている」という考えが浮かび、Aさんは他のスタッフと目が合わないようにうつむき、カンペだけを見ながら、早口で読み上げます。そうやってなんとか乗り切っていますが、なぜ毎回不安になるのか、途方に暮れています。】

 

 Aさんの頭の中に浮かんでいた考え、「どうしよう、みんなから恰好悪いと思われている、挙動不審に見えている」を「認知」と呼びます。認知は、言葉として浮かぶ場合もあれば、イメージとして浮かぶ場合もあります。また、Aさんはカンペを作り、何度も読む練習をし、他のスタッフと目が合わないようにうつむき、カンペだけを見ながら早口で読み上げていました。これらの行動を「安全行動」と呼びます。安全行動は、最悪の結果を防ぐために行う行動です。安全行動として、その状況を完全に避けている人もいれば、Aさんのように、その状況には参加しているけれども、何らかの行動を過剰にやりすぎている人もいます。このように、ついついやっている「認知」や「行動」のクセにより、不安が強いままになっていることが多いです。

4. 不安(不安症)に対する認知行動療法

 不安(不安症)に対しては、「認知行動療法」という治療法が効くことが分かっています。
認知行動療法ではまず、ご自身にとっての不安のテーマや、ご自身ならではの「認知」のクセ、「行動」のクセを整理していきます。これらは人によって千差万別だからです。そして、「認知」「行動」のクセを柔軟に解きほぐし、新たな技を身に着けていただくことで、生きやすさに繋げていきます。つまり、不安が強すぎてやりたいことができない状態から、やりたいことをできる状態にしていきます。ちなみに、不安の強さも人によって様々ですので、「毎日仕事には行けているけれども、不安や苦痛を感じている人」にも、「家から出られないくらい不安や苦痛を感じている人」も、どちらも認知行動療法を行うことができます。このくらいでカウンセリングに行っていいのかな…?と思われても、ぜひご相談ください。
 不安を感じると、普段は反射的にその対象を避けてしまって、じっくりと考えたことはない、できれば考えたくないという方も多いのではないでしょうか。一人では難しくても、カウンセリングでは一緒に整理できますので、ぜひ一度いらしてみてください。ご自身だけではなくお子様についてのご相談も、お待ちしております。認知行動療法については、別のコラム記事「認知行動療法とは」にも詳しく書かれていますので、よろしければそちらもご覧ください。

この記事を書いた人

横山
横山Ms. Yokoyama

臨床心理士 (登録番号:第33354号)
公認心理師 (登録番号:第22712号)
USPTベーシック

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