認知行動療法とは

1.はじめに

みなさんは、普段の生活で、変えたいけれどなかなか変えづらいという習慣はありますか?例えば、お休みの日、せっかくなので早起きをしようとしたけれど、昼に起きてしまって、「今日もダメな一日だな」と思うと、気分がおちこんで、ベッドの中でスマートフォンをいじり、気づけば夕方になり、「何もできなかった」とまた気分がしずんだり…。

実は、こうした生活のパターンには、考え方や行動、感情などの悪循環が見られるケースがあります。

認知行動療法とは、こうした生活の中の考え方(これを、認知と呼びます)や行動、感情のパターンを丁寧に分析し、ちょっとした変化を加えてみることで、生活の良い循環を生み出せるようにする方法のことを指します。

2.認知行動療法とは?

では、もう少し詳しく認知行動療法について説明をします。認知行動療法とは、Cognitive Behavioral Therapy (略してCBT(シービーティー)と呼ぶこともあります)と呼ばれる心理療法の方法の1つです。歴史的にみると行動療法と認知療法という心理療法が統合されたもので、場合によりますが、多くの場合は「認知行動療法」といえば、認知と行動に働きかける心理療法のことを指します。認知行動療法が生まれた背景には、当時の心理療法がいわゆる職人芸で行われており、心理療法の効果に科学的な根拠が少ないという批判がありました。それに対応するように、認知行動療法は科学的な根拠を重視しました。例えば、似たような問題を抱える方の多くに共通するような、認知・行動的なパターンを研究し、そのパターンを変容するためのテクニックを体系立てて開発しています。

 認知行動療法には様々なテクニックがあるので、すべてを説明することは難しいのですが、多くのテクニックには2つの理論が関係しています。なので、その理論を紹介します。

2-1.行動(学習)理論とそのテクニック

行動理論とは、その名のとおり、行動に関する理論です。

例えば目の前に大きな犬がいたとしましょう。ある人は、愛おしさを感じるかもしれません。別の人は、恐ろしくて身がすくむような感覚がするかもしれません。この反応は、実は皆さんの人生の中で学んできたことが関係しているのです。

犬自体はそもそも「怖い」ものではありませんが、例えば小さいころに大きな犬に追い掛け回されたり、かまれたりしたら、それは「怖い」体験だと思います。こうした、そのもの自体は怖くないもの(犬)と同時に、怖い体験(追い掛け回される)をすると、人は犬自体に怖い体験を結びつけるようになり、「恐ろしくて身がすくむような感覚」がするようになります。つまり、犬=怖い、となるわけです。

そして、この恐怖や不安は、その状況を避け続けることで強くなっていきます。例えば、犬が怖い方がやむなく家族で犬を飼うことになったらどうでしょう。最初はとても嫌でたまらないと思いますが、次第に慣れてきて、かわいいところもあると気付けるようになるかもしれません。でも、犬を飼わずに避け続けていたらどうでしょう?おそらく、ずっと犬は怖いままになると思います。

 

行動理論をベースとしたテクニックでは、こうした行動のメカニズムにアプローチをします。

先ほどの犬の例のように、怖くて不安なことは、繰り返し体験することで、少しずつ慣れていったり、「思ったよりも怖くない」と感じる可能性があったりします。少しずつ、丁寧に、段階的に、怖いことや不安なことに接近していく方法を、段階的曝露法と呼びます。

2-2.認知理論とそのテクニック

認知理論とは、考え方に関する理論で、出来事ではなくて考え方が結果を決めている、という発想がもとになっています。

同僚や友人に挨拶をしたが、返事がなかったという状況を考えてみましょう。あなたが、「返事もしないなんてむかつく、非常識だ」と思えば、イライラして、少し冷たく当たってしまうかもしれません。一方、「返事をしないなんて、何が調子が悪いのかな」と思えば、少し心配して、優しく声をかけるかもしれません。どちらが正しいというわけではありませんが、この2つの例は、状況は同じなのに、考え方によって結果がかわっています。このように、我々にはふと浮かぶ考えがあり、その考えによって知らず知らずのうちにそのあとの結果が変化しているということです。

 

認知理論をベースとしたテクニックでは、こうした認知による生活の悪循環にアプローチをします。

普段はあまり意識しない考え方を整理してみることで、自分の考え方のクセがわかります。

考え方のクセが分かれば、そのクセを意識して生活したり、別のパターンの考え方を試してみたりすることで、生活の悪循環を良循環に変化させることができるかもしれません。こうした一連のテクニックを、「認知再構成法」と呼ぶことがあります。

3. 認知行動療法によるカウンセリングの進め方の例

認知行動療法では、2で説明した理論をベースに、クライアントさんの困りごとに合わせた分析を行い、解決方法を共に模索していきます。認知行動療法はよく「機械的な方法」と誤解されることがありますが、実際には非常にあたたかく、協動的な方法です。

まずはクライアントさんの困りごとの状況を丁寧に整理し、一緒に問題のメカニズムについて分析をしていきます。十分に分析ができましたら、その分析に基づく理解をクライアントさんと共有し、一緒に修正していきます。そして、科学的な根拠のあるテクニックに基づいた方法で、生活の質を高めるためのアプローチを行います。

また、ある程度の共通した部分はありますが、クライアントさんごとに見立てを立てるため、ご相談内容に沿った方法を提供することになります。

4. まとめ

認知行動療法の概要について簡単に説明させていただきました。認知行動療法とは、認知と行動の悪循環にアプローチする心理療法の1つです。問題解決的な立場の心理療法でありますが、同時に一緒にクライアントさんの困りごとに立ち向かっていく、という「チーム」でのアプローチという面も強い方法です。

もちろん、専門家としての提案や助言をすることもありますが、クライアントさんに一番詳しいのはクライアントさん自身である、というリスペクトに基づき、生活の質が高められるような方法を共に模索していくことを目指します。

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