“言葉”の影響を考えてみる
~アクセプタンス&コミットメント・セラピーのご紹介~

  • “言葉”の影響を考えてみる~アクセプタンス&コミットメント・セラピーのご紹介~

1.アクセプタンス&コミットメント・セラピーとは

 アクセプタンス&コミットメント・セラピー(以下、ACT:アクトと読む)は、認知行動療法の中の1種類に位置づけられる心理療法です。ACTでは“いま、ここ”と十分にふれあい、価値づけられた行動を選択するという、心理的柔軟性を高めることを目指してアプローチを行っていきます。つまり、ぐるぐる考えてしまうとった嫌な思考をはじめとする“苦しみ”などを評価、判断することなく受け入れて(アクセプタンス)、自分の人生において大切にしたいことのための行動を増やしていくこと(コミットメント)を目指しています。

2.言葉とACT

 そんなACTで重視されているのが、“言葉”です。ACTでは、言葉の悪い影響を減らし、いい影響を増やしていきます。急に言葉の影響と言われてもピンとこないと思うので、まずは普段の生活における言葉の役割から考えてみましょう。

2-1. 私たちの生活と言葉

 私たちは普段、たくさんの“言葉”に囲まれています。今、この文章にも言葉は使われていますし、たくさんの言葉を使って意思疎通を行っています。これらの言葉は、私たちの生活を劇的に便利なものにしています。例えば、ほしいものがあれば、「〇〇をとってほしい」と伝えることができますし、今抱いている感情に名前を付けて、「今私は悲しい気持ちだ」を伝えることもできます。誰かに危険が迫っているときには、「逃げて!」と指示を出して、身を守る行動を促すこともできるのです。言葉がない生活をイメージすると、それはそれは不便なものになるでしょう。

 しかし、この便利な“言葉”が、たまに悪さをすることがあります。試しに、「私はダメだ」という考えについて考えてみましょう。仕事や学校で何か失敗をしたとき、私たちは簡単にこの言葉に支配されてしまいます。「こんなこともできないなんて、私はなんてダメなやつなんだ」、「他の人にもダメだと思われているに違いない」、このような考えを持った経験がある方も多いのではないでしょうか。ぐるぐる、ぐるぐる考えても仕方ないことは分かっているのに、どうしてもその考えが頭から離れない。そんな時、本当は目に見えないはずなのに、「ダメ」という看板を掲げているような気持ちになります。この看板は、あなたが何をするときにも邪魔をしてきます。「私はダメなんだからこの挑戦はやめておこう」、「こんなことしても、結局失敗するに決まっている」といって、ひっきりなしに行動をすることを妨げてくるでしょう。

2-2. 言葉の悪い影響を減らすための方法

 ここで一度考えていただきたいのですが、この「ダメ」という非常に支配力の強い看板は、本当にあなたを表しているのでしょうか。本当に看板が掲げられていて、不名誉な称号として公的に認められているのでしょうか…。答えは、「いいえ」です。単に言葉が“まるで本当のことのように感じる”という悪さをしているだけで、そこに掲げられているわけではありません。落ち着いて考えていると当たり前のことでも、悩みに巻き込まれている時には、冷静に言葉の影響力を考えることができなくなってしまいますよね。

このような状態にACTではアプローチをしていきます。上述の通り、ACTではぐるぐる考えてしまうといった嫌な思考をはじめとする“苦しみ”などを評価、判断することなく受け入れて(アクセプタンス)、自分の人生において大切にしたいことのための行動を増やしていくこと(コミットメント)を目指しています。“受け入れる”と聞くと、耐え忍ぶイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ACTで目指す“受け入れる”のイメージは少し違います。少し距離をとって、一緒にいることを目指すという感じでしょうか。上の例を使って説明すると、「私はダメだ」という考えをなくそうと必死にもがいたり、隠すために一生懸命努力したり、やりたいことをあきらめたりするのではなく、“「私はダメだ」という言葉が悪さをしようとしているな”と気づき、そのような考えがあるとみとめてあげます。その上で、言葉と戦うために時間を費やすのではなく、やりたいこと、例えば家族との時間や趣味の時間、仕事でやりたいことなどのために使う時間を増やしていきます。このように、生活における問題に対して、ACTは2つの側面からアプローチをしていきます。

3.おわりに

 ここまで読んでいただいた方の中には、『なんとなくはわかるけど、なんか難しくない?』と感じている方もいらっしゃるかもしれません。それは全くその通りです。誰にとっても、気づき、みとめる、あるいはやりたいことを言葉にするという感覚をはっきり理解するということは非常に難しいのです。そこで、ACTでは様々なエクササイズや、メタファーを使って単に知識として理解するのではなく、体験的にその感覚を味わっていきます。一方的に教わるのではなく、“一緒に”体験してみるということが最も重要な点なのです。自分で“体験する”、その第一歩としてぜひ考えてみてください。今この文章を読まれているあなたの頭の中には、何か離れることのできないあなたを支配する嫌な思考はありますか?そして、それはあなたがやりたいこと、進みたい方向を邪魔してはいませんか?もしそうなのであれば、ACTがなにかの助けになるかもしれません。

カウンセリングのお問い合わせ・ご予約

075-334-6511

予約制です。お電話にてご予約ください。

【電話受付時間】
  • 月・火・木・金:12時~20時
  • 水:10時~18時
  • 土・日:9時~17時
  • ※初回は50分か75分でご予約下さい。その後はカウンセラーと相談して決めていただけます。
  • ※キャンセルのご連絡につきましては、上記時間帯以外は留守番電話にメッセージをお入れください。折り返しのご連絡はしておりませんので、新たなご予約につきましては、電話受付時間内に改めてご連絡をお願いいたします。
  • ※複数のEAP会社ともプロバイダ契約していますので、ご自身が勤務されている会社が加入していれば心理カウンセリングを数回無料で受けることが可能になります。