パートナーの暴力(DV)と子ども~子どもへの影響とケアについて~

  • パートナーの暴力(DV)と子ども~子どもへの影響とケアについて~
  • 1.はじめに

このコラムでは、家族に危機が訪れた時の中でも、特に家庭内でパートナーからの暴力があり、その状況から離れた後に、子どもたちに対してどのようなケアができるか、ということについて考えたいと思います。

家族を取り巻く状況が落ち着いてから、子どもがイライラしやすくなったり、ふさぎこんだりと様子が変わってくることがあります。パートナー間の大きな問題がやっと落ち着いたと思ったら、今度はこの子の問題か…と辛くなってしまったり、何とかしなければと親が焦ってしまったりすることもあるかもしれません。しかし、ここで子どもの困った行動を、子どもの問題とするのではなく、子どもの行動をどう大人が捉え、関わっていくか、という視点が重要になります。

 

  • 2.子どもの周囲との関係性の捉え方

子どもは成長発達の段階があり、発達段階によって周りの出来事と自分との関係はとらえ方が変わってきます。乳児は周囲の雰囲気を全身で感じ取っています。幼ければ幼いほど、周囲の大人からの温かく、子どもの思いをくみ取って合わせてくれるような関係性を必要とします。乳児だから親が大変でも言葉がわからないから平気、なのではなく、あやす、表情で応答するなど細やかな情緒的なやり取りをする余裕が親にあることが乳児の成長発達には重要です。幼児は、周囲の出来事を自分のせいだと思う傾向があります。例えば、楽しみにしていた遠足の日に雨が降れば自分が悪いことをしたせい、と自分に関連付けます。親の機嫌が悪かったり、家族の中で暴力が起こったりすると、自分のせいだ、自分が悪い子だからだと思い込んでしまうことがあります。そして、必死になって暴力を止めに入ろうとすることもあるでしょう。児童期の子どもは、何が正しいか、間違っているか、ということについて考えられるようになってきます。ただし、暴力を正当化するような言い訳やジェンダーに関する神話を信じやすい時期でもあります。思春期くらいになると、周りで起こった出来事と自分との関係についてある程度客観的に捉えることができるようになっていきます。しかし、幼い頃に生き延びるために身に着けた周囲との関係性のパターンは成長しても考えや行動の選択に影響を及ぼします。

 

3.DVと子どもとの関係

DVの本質は権力と支配の維持であり、大きな分類として身体的暴力、精神的暴力、性的暴力があります(RRP研究会,2023)。

身近な親という人間関係のモデルから子どもたちは様々な影響を受けます。

まず、DVにより支配する側と支配される側という関係が家の中に生まれます。この関係性の中で、親自身が安心してそこにいるということが難しくなるため、親がそれぞれに、子どもの気持ちに注目し、子どもに安心と情緒的なケアを提供し続ける、ということは非常に難しくなります。そして、身近に暴力があると子どもの気持ちは不安定になり、好奇心を持って探索したり、独立して動いたりすることが難しくなる場合もあります。

また、子どもは怒りや攻撃性の表出について間違った学習をします。本来「怒り」とは気持ち(感情)の一つであり、行動とは別のものです。しかし、加害者が「怒り」=「暴力」(怒ったから殴った、怒ったから怒鳴った、怒ったから無視した)という行動のモデルを示し、暴力によってパートナーをコントロールする様子を学習した子どもにとっては、「怒り」=「暴力」であり、暴力によって人を支配することを学んでしまうことがあります。

その他にも、暴力は、学習面での問題やいじめに巻き込まれやすくなるなど様々な影響を子どもたちに与えます。

 

4.子どもに対して親ができること

暴力から離れてからも、子どもたちが学習した暴力の影響をすぐに消し去ることは難しいです。また、暴力から離れるということは、子どもにとって環境が変わることになります。子どもが得たもの、失ったもの、子どもなりに色々な気持ちがあると思います。お子さんが色々な気持ちを話し、子どもの気持ちを親が聴いてあげられる、という状況を作ることが大切です。日々の生活もあり、親御さん自身も情況や気持ちの変化がある中で、子どものケアをすることはとても大変なことです。何より、暴力から離れ、家族の安全を守り、暴力に晒されない環境を作った、ということが一番重要です。次に、予測ができる生活を整えることが大切です。その中で親として子どもの気持ちを聴くために、そして子どもの行動をどう捉え、どう関わっていけばよいのか、ということを考えていくために、親御さんご自身がカウンセリングを利用されるということも選択肢の一つです。また、親として関わる中でお子さんのご様子から、お子さんへの直接的な心理的ケアが必要かもしれないと感じられた場合も、カウンセリングを利用されることも選択肢の一つです。当センターでは公認心理師、臨床心理士の資格を持ち、DV被害に晒された子どもを支援する知識と経験を持ったカウンセラーがおり、お子さんに対しても暴力に関する心理教育やトラウマケアを含めた安全なカウンセリング(お子さんの年齢によってはプレイセラピー)を提供することが可能です。

 

5.おわりに

このコラムでは、パートナーの暴力(DV)の子どもへの影響とケアについて書きました。子どもの一番身近な大人である親御さんがお子さんについての一番の専門家です。だからこそ、お子さんの行動の捉え方、関わり方に迷った時にカウンセリングを利用して、ご自身の方向性を整えることに利用して頂けると落ち着いて対処できることにつながるかもしれません。そして、お子さんと関わる手がかりを知りたい場合やお子さんへの直接の心理ケアが必要かもと感じられる場合は、ぜひ担当のカウンセラーに相談して頂けると、お役に立てると思います。

 

※参考文献『DVに晒された母子を支援するコンカレントプログラム・マニュアル』,2023,NPO法人RRP研究会監修,金剛出版

この記事を書いた人

泉
泉Ms. Izumi

臨床心理士(登録番号:第28318号)
公認心理師(登録番号:第15896号)

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