身体とこころの関係~Somatic Experiencing®(ソマティック・エクスピリエンシング)について~

1.Somatic Experiencing® (ソマティック・エクスピリエンシング)とは
Somatic Experiencing® (ソマティック・エクスピリエンシング)とは、トラウマへのアプローチの手法の一つであり、アメリカのPeter Levine博士が開発したものです。博士は長年の研究によって、トラウマとは個々の出来事そのものではなく、その出来事に対して身体を含めた神経系がいかに反応するかという問題である、という見地からこのアプローチを導き出しました。「ソマティック」は「身体の」、「エクスペリエンシング」は「経験」という意味で、「ソマティック・エクスペリエンシング」は日本語にすると「身体の経験」となります。
2.身体とこころ、トラウマの関係
身体とこころが関係あるというのは、皆さん日々何となく感じていらっしゃるのではないでしょうか。身体感覚は人間の意識の基礎となるものです。身体が行うことは、身体に記憶され、こころの中に記録されます。平常時、身体感覚は行動を起こすためのサインとなります。私たちは、脅かされたら闘うか、逃げる、という行動を起こします。お腹がすいたらご飯を作ったり食べたりし、疲れたら眠り、境界を侵害されたら怒って主張します。いずれの場合でも、身体からのサインにこころが従い、行動を起こします。身体感覚は、サインを発することで、私たちの体験と人生の機微を導いてくれるものです。よって、身体感覚からのサインをキャッチし、理解することは生きていく上でとても重要です。
しかし、トラウマを受けると、身体感覚は効果的なサインを送るのではなく、恐怖による麻痺や無力感、状況にそぐわない怒りをもたらすサインとなることがあります。ある人の身体的サインの一部が、恐怖や無力感、どうしようもない怒りや挫折感の前兆として反応すると、その人は孤独になり、苦痛をもたらす感覚を遮断しようとします。しかしそうすると、苦痛をもたらす感覚だけではなく、快適さ、満足、あるいは今ここにある危険に対しての身体からの信号に気づくことも難しくなります。
トラウマとなりうるような出来事には、例えば、災害、事故、手術、レイプなど単一の出来事や、虐待や結婚生活のストレスなど慢性的なストレスにさらされる、といった出来事があります。そのような出来事に遭遇しても、私たちは様々な人生体験から学び、体験として統合したりすることができる場合もあります。しかし、起きたことがひどかったり、強かったり、突発的または持続時間に対して、防御したり、対処したり、消化したりできない時には、身体とこころが統合されず、自分が自分でなくなってしまうような感覚になってしまったり、方向性がわからなくなってしまったりするといった混乱状態に陥ります。そして、ショックを受けたこころと脳は秩序を失くし、体験の全体性を把握して学習していくことが難しくなります。
3.Somatic Experiencing®(ソマティック・エクスピリエンシング)のセッション
Peter Levine博士が開発したソマティック・エクスピリエンシングは、言語を中心とするセラピーとは異なり、身体感覚から感情、知覚、そして最終的には思考へとクライアントを導くことを目的とした「ボトムアップ(下から上へ)」のセラピーです。セラピストは、クライアントがご自身の身体感覚を感じるのを支援しながら、不快な感覚や感情を調節できるよう体験に働きかけます。そして、トラウマの症状に対して、身体感覚を通じて自律神経のバランスを取り戻すプロセスを経ることで、身体(生理反応)が変わり、考え方や感じ方、行動が変容することを目指します。身体感覚に注目し、神経系が調整されていくことで、トラウマの影響による様々な症状も穏やかになっていきます。
身体感覚を感じる、ということについて、もう少し説明します。セッションでは、来談された方とセラピストが「いま・ここ」の身体感覚に目を向け、身体的な反応やイメージにも注目していきます。身体感覚とは、例えば、肩に力が入っている、手は暖かい、胸のあたりが重たい、足が地面についている、など様々な感覚です。どれもご自身の感覚ですので、正解や不正解はありません。この場面ではこう感じたい、こう感じなければならないのではないか、という判断をする必要はありません。私たち現代人は感覚をただ感じることには慣れていないことがしばしばあり、感じた感覚を打ち消そうとしたり、感覚に理由をつけたりすることもあります(例えば、今胃が重いのは、昼にラーメンを食べたからだと思う、など)。ソマティック・エクスピリエンシングのセッションでは、身体感覚をただ感じる練習も含めてゆっくりと安全にプロセスを進めていきます。恐怖や痛みなどの感覚に圧倒されて再びトラウマを体験することにならないように、安全で、安心できる場の中で、安全なペースで進めていけるようにセラピストは働きかけます。
また、ソマティック・エクスピリエンシンのセッションの中では、必要に応じてセラピストが身体にタッチをしてサポートをする場合があります。その際は必ず来談されている方に同意をとります。同意されていない方にタッチをすることはありません。
こうして身体感覚に目を向け、私たちが「いま・ここ」に留まることで、圧倒されるような体験の影響から自由になっていくことを体験していける可能性があります。
4.おわりに
トラウマへのアプローチには様々な方法があり、カウンセリングセンターきょうとにも様々なアプローチができるカウンセラーがおります。トラウマへのアプローチの選択肢の一つとして、そして身体を含めて活き活きと生きることにソマティック・エクスピリエンシングが役に立つ方もいらっしゃると思います。ご希望の方はぜひ共に体験をさせて頂けたらと思います。
※参考文献
『身体に閉じ込められたトラウマ ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア』<著>ピーター・A・ラヴィーン<訳>池島良子、西村もゆ子、福井義一、牧野有可里 ,2016, 星和書店
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