強迫性障害とは

1.強迫性障害とは
いきなりですが、みなさんは外出前にドアや窓の鍵がかかっているか確認しますか?外から帰宅した時に手を洗いますか?おそらく、多くの人が家を出る前に鍵がかかっているか確認し、外から帰ってきたら手を洗うと思います。私もそうです。どちらも毎日やっています。鍵の確認や手洗いなどは多くの人が何気なくやっている行動で、それ自体が問題になることはあまりありません。ただ、この記事を読んでいただいている方の中には、同じ手洗いや鍵の確認であっても、手洗いにかける時間が長くなったり、鍵がかかっているか何度も確認しないと気が済まなかったりして困っておられる方がいるかもしれません。そういった場合、「強迫性障害」に当てはまる可能性があります。手洗いや鍵の確認以外にも、すれ違った人をケガさせてしまったのではないかと心配で来た道を何度も引き返してしまう、お店の商品を盗ったかもしれないと思ってカバンの中を何度も確認してしまう、ふと浮かんだ不吉な想像が起こらないように自分で決めた儀式を繰り返してしまうといったことに時間をかけておられる方もいるかもしれません。不安や心配に思う対象は多岐にわたります。
ここで少し「不安」についてお話させてください。どんな方でも生活していれば不安や心配といった気持ちを感じることが一度くらいはあるはずです。不安や心配といった気持ち自体は私たちにとって身近なものです。また、先ほど例に挙げたような鍵の確認や手洗いなどの日常的な行動にも実は「不安」が影響していることが多くあります。鍵がかかっているか?手が汚れていないか?といった不安を解消するために鍵を確認し、手を洗うからです。不安に対処するのは当たり前のことですが、不安を解消するために行動しているのに不安が消えない、むしろ増えていっている気がする…こういった場合に「強迫性障害」の可能性が浮かびます。対処しても不安が消えないのでまた対処して…という形で不安を打ち消すための行動が繰り返されるのは強迫性障害の特徴の一つです。
そして強迫性障害にはもう一つ特徴があります。それは、感じている不安の中にあえて対処しなくてもいいかもしれない不安が混じっている場合があるということです。「対処しなくてもいいかもしれない不安」とは、多くの人は気に留めないような不安と言えないくらい小さな「気がかり」のことです。何度も手を洗ってしまったり、何度も確認をしてしまったりする方の中では、「誰でも感じる不安」と「対処しなくてもいいかもしれない不安(=気がかり)」がどちらも同じ「不安」としてひとまとめになってしまっていることがあります。そうなると、誰もが感じて当然の不安にももちろん対処が必要ですし、加えて、それ以外の小さな気がかりも全部に対処しなくてはいけなくなります。不安に感じる場面が増えるので、だんだん外出が億劫になったり、職場でも仕事が手につかなかったり、自宅でも落ち着いて過ごせなくなったりもするかもしれません。対処(洗浄や確認、儀式など)にも多くの時間を割くことになり、思うような生活が送りにくくなってしまいます。
強迫性障害は日本では100人に1人~4人ほどが発症すると言われており、めずらしい疾患というわけではありません。ただし生活への支障が大きくなりやすい疾患です。このあと説明しますが、強迫性障害は不安とそれに対する対処との悪循環によってできあがっていますので、その循環を和らげていくことで、困っている状況は解消されやすくなります。
2.不安と対処の悪循環
強迫性障害を治そうとするときは、症状の仕組みを理解することが大切です。強迫性障害は「強迫観念(不安)」と「強迫行為(対処)」の二つの悪循環で成り立っているとされています。
強迫観念:繰り返し浮かんでくる不安や恐怖、不快感を伴う考えやイメージのこと
強迫行為:強迫観念を打ち消そうとして繰り返される行動
「強迫行為」は「強迫観念」への対処として実施されますが、実はその効果はあまり続かないと言われています。また、強迫行為をすればするほど強迫観念が出てきやすくなるという悪循環も起こってしまいます。これが先ほど説明した、「対処しなくてもいいかもしれない不安(=気がかり)」にも対処が必要になっている状態です。
このような悪循環は発症して短期間で自然と治っていく場合もありますが、場合によっては強迫行為に取られる時間がだんだんと長くなってきたり、強迫症状が出る場面が増えていったりしてしまうことがあります。そういった場合は、積極的に悪循環を和らげていくことを考えてもいいのではないかと思います。
3. 気がかりに対処しない練習
先ほど説明したような悪循環を和らげるためには、気がかりに対処しない練習を「少しずつ」します。少しずつ、つまり段階的に練習していくというのが大切です。対処しないといけないと感じるくらい不安だからしている行動をしないようにするというのはなかなか大変ですので、一気に取り組むよりも段階的に進めていく方がうまくいく場合が多いです。カウンセリングでは、まず一番練習しやすい場面はどこか相談しながら進めていきます。一人では頑張るのは難しい方や、繰り返しに疲れてそんな気力すら起きないという方もおられるかもしれません。そういった方も誰かと一緒に考えていくことで、取り組むためのヒントが見つかり、治療へのモチベーションが上がる可能性はあります。
このような練習は、認知行動療法の一種で曝露反応妨害法と呼ばれるものです。あえて不安な状況にチャレンジして、いつもしている対処をしない練習を繰り返します。そうすることで、これまで不安に感じていた場面でも何も対処せずに過ごせるようになっていきます。
また、カウンセリングでの治療に加えて、薬の力を借りることでさらに気持ちが楽になることもあります。薬の力を借りてみるかどうかということについても、カウンセリングで一緒に相談しながら考えていくことができます。
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4. 最後に
強迫的な不安が増えることもとてもつらいですが、不安への対処に時間が割かれてやりたいことができない、思うような生活ができないという状況も大変苦しいものです。自分の人生なのに強迫症状にコントロールされているとすら感じられるかもしれません。強迫性障害の治療は不安と対処の悪循環を和らげてくことはもちろんですが、主体的な生活を取り戻して、やりたいことに時間とエネルギーを十分割けるようにしていくことだとも思います。強迫症のコントロールから抜け出して主体的に生活を歩みたいという方、カウンセリングで一緒に考えていきませんか?
また、一人ではうまくいかなかった、上手くやれる自信がない、強迫性障害か分からない、という方もよければ一度カウンセリングにお越しください。少しでも楽に過ごせるヒントを一緒に探していきましょう。
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