トラウマについて

1. トラウマって何 

 「トラウマ」という言葉皆さん耳にしたことがかもしれません。一般的にトラウマとは心に傷を負(心的外傷)体験のことを言います。例えば、地震などの自然災害事件、事故など何らかの被害に見舞われる体験や、家族や人間関係などでこころに傷つきを受けた体験のことです。そういった体験を受けた人がその後の生活を送る中で、たとえ今ここがどんなに安全な恵まれた環境であったとしても、その傷を負った場面やその時の感覚がよみがえっ普段の生活が送りにくかったり、嫌な気持ちが繰り返し思い起こされたりすることで現在での周囲の人と自然に関わりづらくなるような症状PTSD(心的外傷性ストレス障害)と言われます。カウンセリングには、そのような苦しい体験をしてきた人が自身のトラウマやPTSDに気づき、それをどうにかしたいと来談される方も多くおられます 

 

  1. 2. トラウマのしくみ

 

私たちの日常生活は、 

【いろいろな体験(今ここの状況の中で自分がしていること・されていること)】 

       ↓↓↓ 

【その時に自分が感じていること】 

       ↓↓↓ 

【それに対して思う・考える・行動する】 

という、その瞬間瞬間の繰り返しで成り立っています。 

 ただ、①の体験自体が強烈なもので、例えば生死にかかわる体験や「自分がどうなるか分からない」ような体験をした時、普段以上の強い恐怖や不安が襲ってきます。この恐怖や不安が生きる上で強烈であればあるほど、②③のように悠長に感じたり考えたりすることはできません。普段の意識を越えて人間の本能としての防衛機能が働きだし、その時自分が感じた強烈な感情、その体験自体を「できるだけ自分のものと切り離して感情や感覚を麻痺させ感じなくさせる。その体験そのものがなかったかのように感じさせる」働きが起こります。例えば、頭が真っ白になり、今までの日常の感覚がくずれ、自分が立っている、居るという感覚がなく、ふわふわしてくるとおっしゃる人もいます。それはあまりの恐怖にこれ以上何も傷を負わせないための防衛本能が働いているのです。 

ただ、そこまでの強烈な体験や感情を自分から切り離したり蓋をし続けることにも、ものすごくエネルギーがいりますし、限界があります。トラウマ体験と似たような状況に遭遇したり、似たような感情を抱く場面に遭遇すると、その時の感情が、時に嵐のように一気に、時には煙のようにじわじわとよみがえってくることがあります(フラッシュバック)。そのことに苦痛を感じたり、そのせいで日常生活がうまく送れなかったりすると、トラウマも含めた治療が必要になってくるというわけです。 

  1. 3. トラウマの背景にあるもの 

 

 自分の身に危険や恐怖を感じた体験が小さい頃から何度も繰り返されたり、出来事は1回きりであっても、その後に起こる周囲との関係などから、その傷がさらに深くなってしまうことも起こりえます。 

 トラウマの背景には、恐怖や嫌な感情を覚えたその時だけの体験だけでなく、これまで生きてきた中で何を体験し、どのように感じてこられてきたかや、これまで自分を作ってきた価値観(人生に対する考え方、何を大事にし何を嫌がっているか)なども、密接につながってあるようです。トラウマにも個人差があるように、同じ体験であっても「それをどのように感じたのか」がとても大切で、感じた「その人自身」のことも大事になってくるのです。 

 カウンセリングではまずお話を伺いながら、トラウマによって今の日常生活にどのようなことに悩まされているか、整理していくことから始めます。トラウマの体験が問題ではありますが、第一に考えるのは、トラウマを体験してきたことで「いま自分がどういうふうに考えたり感じやすいのか」「どういうことに悩んでいるのか」ということです。そういった思いをカウンセラーと形にして共有していく時間がまず大切になってきます。  

 

  1. 4. どのような治療法がある? 

 

 最近はトラウマ体験やPTSDに対するさまざま心理治療アプローチが出てきています。おそらく共通しているところは、本人が望まない限りトラウマの体験自体を無理に思い出させたり、ほじくり返したりはしないということです。何かしらのトラウマがあり、現在の生活に支障をきたしていることについて、自分が「どうしていきたいか」「(PTSDを和らげることで)どういう自分に近づけるか」、そのためにどのようなことが必要かを一緒に考えていきます。 

 これらは一例ですが、治療の目指すところとして、 

  ・周囲からのさまざまな刺激から、自分の身を少しでも守れるようになること 

  ・「今ここ」を意識することで、恐怖感から安心感を少しでも感じられるようになること 

  ・トラウマにとって引き起こされた気持ち・感覚をちゃんと自分で感じれたり、(言葉やイメージで)表現できたりできるようになること 

  ・苦しい気持ちになった時に自分でできる落ち着かせ方、安心感の得られ方を一緒に身につけていくこと 

  ・今の対人関係の中で、(トラウマから引き起こされた気持ちによって)どのようなことが起こりどのような気持ちになるか、整理していくこと 

 などが挙げられます。 

 もちろん治療法をそのまま当てはめていくのではなく、どうやって今のつらい自分を和らげてあげることができるか、その人に合った方法をカウンセラーと考えていくことになります。 もしもトラウマやPTSDで悩んでいる方がおられれば、カウンセリングという場もどうぞご利用いただければと思っています。 

この記事を書いた人

白川
白川Ms. Shirakawa

臨床心理士 (登録番号:第14424号)
公認心理師 (登録番号:第7250号)

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